ビットコインを中心に取引増加傾向 - 仮想通貨統計情報分析
2019-09-19 10:44[ れんぶらんと ]
1.稼働口座数は180万口座(昨年末比18%増加) 口座あたりの投資額は22万円。
2.月間取引額において現物は8,383億円(17%増加)。証拠金は2兆8,721億円(62%減少)。
3.取引額はBTCが圧倒的で現物で全体の83%を占める。
4.保有残高ではBTCがXRP抜いて1位。ただしBTC相場上昇の価格変動が要因。
5.FXと比べると仮想通貨は口座数で多いものの、1口座当たりの投資額が小さい。
認定自主規制団体である一般社団法人日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)が、仮想通貨の取引や保有額に関する統計データ(2019年1月~7月分)を公開しました。データは今年2月に2018年12月分のものが公表されていましたが、当時の分析は当欄で以前に「リップルを愛する日本人の姿が浮き彫りに - 協会が統計資料を公開」として紹介しました。今回の公表はその時以来のものとなります。
1.預託金額と口座数 - 取引者数が増加 1口座当たりの投資額は22万円
統計によると、公表データで直近のもの(2019年7月)で、利用者の預託金額は合計で4,270億円、稼働口座数は1,890,019です。これは前回公表されていた2018年12月のそれぞれの数値(2,877億円,1,601,457口座)と比べると伸びています*。ただし、BTCの価格に着目すると、2019年7月は約110万円、2018年12月は約40万円なので、預託金額の増加は相場の上昇を背景とする保有仮想通貨の評価額の増加に起因する部分が大きいと考えられます。一方で口座数については相場上昇の直接的な影響はないので純粋に取引者数が増えたとみてよさそうです。
なお、これらの数字から導かれる1口座あたりの預託金は225,967円(2019年7月)となります。
2.取引額 - 現物は増加するも証拠金は急減
2019年7月の1カ月間における取引額は、現物取引で8,383億円、証拠金取引で2兆8,721億円です。これは前回公表されていた2018年12月の取引額(現物:7,124億円,証拠金:7兆6,386億円)と比べると、それぞれ17%増加,62%減少となっています。ここでは証拠金取引の急減が目を引きますが、これはJVCEAによる自主規制規則において、レバレッジ倍率を4倍以下とするガイドラインにしたがい交換業者がレバレッジ倍率を引き下げたことが背景にあります。この結果、現物取引と証拠金取引の割合は3:1となっています。
現物取引を通貨ごとの内訳で見ると、ビットコイン(BTC)が1位で6,954億円、2位はリップル(XRP)で752億円です。前回公表時ではBTC 3,445億円、XRP 3,053億円とBTCとXRPが拮抗していたのですが、今回はXRPがBTCに大きく水をあけられた形となっています。なお、3位はモナコイン(MONA)で224億円、4位はイーサリアム(ETH)で193億円となっており、前回5位だったMONAが躍進しています。
3.保有状況 - BTCがXRPを抜いて首位奪還
現物取引で見た場合、1位はBTCで1,617億円で、前回の662億円から2.4倍へと急増しています。2位は前回首位だったXRPで961億円で、これは前回の984億円から微減となっています。3位以下はETH,BCH,MONA,LTCとなっています。
BTCの首位奪還については、その価格が昨年末比で2.7倍の上昇(逆にXRPは9%の下落)となっていることが主な理由です。
4.FX取引との比較 - 口座当たりの預入資金額でFXは仮想通貨の3倍
仮想通貨取引と類似性が高いといわれている店頭外国為替証拠金取引(FX取引)の場合は、一般社団法人金融先物取引業協会によると直近(2019年6月時点)のデータで預入証拠金が1兆5,122億円、稼働口座数が792,543で1口座あたりの証拠金は190万円となります。つまり、仮想通貨取引はFX取引と比べて、投資金額において3分の1、口座数は2倍強、1口座あたりの投資金額は10分の1となります。
これらの数字が表しているものは仮想通貨取引は20~30代の若手が小口取引を行っているのに対して、FX取引は40代以上のミドル世代が大口取引を行っている、ということです。このことは、今後FX取引の利用者が仮想通貨取引にさら参入すれば仮想通貨市場が拡大する可能性が高いことを示唆しているといえるのではないでしょうか。
なお、取引額においてはFX取引が1カ月で250兆円であるのに対し、仮想通貨取引は現物と証拠金の合計が3.7兆円なので67倍の違いがあります。ただし、この数字は仮想通貨取引のレバレッジ倍率が4倍以下であるのに対し、FX取引は25倍以下なので同列で比較することはできません。
* 今回の統計情報公表に際し、前回公表されていた2018年12月分の数値が修正されている。当欄では修正後の数値を使用している。
れんぶらんと
17世紀に活躍したオランダの画家レンブラント・ファン・レインの作品をこよなく愛する自称アーチスト。 1980年代後半のバブル期に株式および外貨資産投資を始め、いい思いをしてから投資の世界にどっぷりつかっている。