日銀追加緩和見送り直後にビットコイン急落。どう評価すべきか?

2019-09-19 18:08[ 松田康生

トピック 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン

本日午後12時00分頃BTCを始め主要仮想通貨は全面安となり、ビットコインは5万円近く下落した。今朝のFOMCでの利下げで上がり切れなかった事やこのところ大きく値を上げていたETHが共同創始者ルービン氏のイーサリアム1.0はスケーラビリティに問題があったとした発言もあり頭打ちとなっていた事など地合いが悪化していたところに日銀政策決定会合での政策変更なしとの報がダメを押し、10,000ドル前後のストップを発動させたといったところだろうか。地合いの悪化や大きな背景で既に下がりかけていたところに11時49分頃に発表された日銀の緩和見送りが引き鉄を引いた形だった。

市場のコンセンサスも見送りだったが、米欧に続いて日銀も何らかの緩和策を出してくるのではないかという期待もあったせいか、政策決定会合直後に大きく下げた訳だが、そうした展開になった背景には最近の日銀緩和策は複雑すぎて、米国の様にどれくらい市場が織り込んでいるなどと事前に知ることが困難になっている事も挙げられる。加えて、市場は若干勘違いしているところがあるのではないかと考えている。今回の決定会合で「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール:YCC)」「資産買入れ方針」ともに現状維持となった。声明文も前回とほぼ同じだが、最後の段落に「(次回会合で)経済・物価動向を改めて点検」するとしている。過去には2016年7月の金融政策決定会合で黒田東彦総裁が「総括的な検証」の実施を指示し、その次の9月会合において検証を踏まえて、現行のイールドカーブコントロール政策が導入された経緯がある。今回も来月の本格的緩和に向けた予告という解釈も可能だ。

黒田バズーカという言葉を覚えているだろうか。2013年4月の量的・質的金融緩和の開始(第一弾)では金融政策の目標を金利からマネタリーベースに変更、国債買い入れ上限だった日銀券ルールも撤廃した。2014年10月の量的・質的金融緩和の拡大(第二弾)では同日にGPIFの外貨アセット増加と合わせて1か月で15円以上円安が進んだ。その後、2016年1月のマイナス金利導入、更に2016年9月の長短金利操作付き量的・質的金融緩和と黒田日銀は常に市場の予想の上を行っていた。そのスタイルは戦力の逐次投入はしないというものだ。やるならば、躊躇なく、出来ることは全てやる。そして、今回は2016年7月にそれまでの量的・質的緩和を次回会合までに総括すると予告して9月に新たな枠組みを導入した市場の記憶を利用し、経済・物価動向を再点検すると脅しをかけてきた訳だ。今年2019年は、2013年、2016年と3年ごとに政策を枠組みを見直してきたタイミングにもあたる。

尚、黒田総裁は、その後の会見で、現行の金融政策の枠組みを変更する必要は無いとしつつ、金融緩和に前回より前向きになっているとし、またイールドカーブはもう少し立った方が良いとした。その結果、次回会合でのマイナス金利の深堀りが本命視されつつあり、ドル円は108円台に戻している。会見では次回会合で何もしない可能性も否定しなかったが、実は主税畑出身の黒田総裁にとって消費税引き上げこそライフワークであり、それを成功させるためなら何でも行う可能性は高い。

今回のBTCの下落は三角持ち合いの中での一時的な調整と考えていて、そのきっかけである日銀も実は売り材料とまでは言えないもので、早晩に切り返すものと考えている。

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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