2018.9.21【ハッキング事件で値を下げるも73万円に戻す】

2018-09-21 17:00[ 松田康生

Weekly Report 仮想通貨 bitcoin Ethereum XRP Bitcoin Cash Litecoin



Review

ホワイトナイト登場

先週のBTC相場は下に往って来いの展開となった。先週来の好地合いを受け73万円台で始まるも、国内第3位の交換所Zaifでシステム障害で仮想通貨の入出金が停止されると、ハッキングではないかという懸念が広がり70万円割れの水準まで急落。顧客資産の安全は確保との続報に下げ止まると、先週から好材料が続いていたXRPが急騰、BTCも71万円台へ値を戻す。その後、やはり入出金停止はハッキングが原因で被害額が67億円と発表されると68万円台へ急落したが、Jasdaq上場で子会社に交換所を持つフィスコ社が50億円支援、顧客預かり資産を補償されること、またCBOEのBTC先物9月限の清算時間に向けて急反発。米SECがCBOE分のETF可否の正式審査を始めたとの報道に73万円台へ値を戻している。

Outlook

ハッキング事件は売り?買い?

来週のBTC相場は上値余地を探る展開を予想する。今週はZaifのハッキング事件に振らされた1週間だった。先駆けて法整備を進め、世界を一歩リードしていた日本の仮想通貨業界だったが、今年1月のコインチェック事件を機に守りに入り、ようやく当局から新規交換業者の登録を進めるとされたこのタイミングでのハッキング事件の再発に麻生金融相も「甚だ遺憾だ」と述べた。仮想通貨に必要なものはETFでも機関投資家でもなく、“あぶない”や“あやしい”といった一般社会の不信感の払拭で、それが出来れば投資家は後からついてくる。ただ、この事件を受けても相場が切り返した背景に、顧客資産が補償されるのであれば新たな買いが入るという思惑やシステム障害の時点で市場はある程度織り込んでいてBuy the Factで買い戻されたという指摘もある。しかし、そうした仮想通貨市場の需給要因だけでは、ホワイトナイトとして顧客資産の穴埋めに50億円の支援を申し出たフィスコ社株が急騰したことを説明出来ない。他の金融機関を例にとるとある銀行の経営が悪化した場合、そのまま破綻するケースが珍しい。旧経営陣を追い出すことを前提に、どこか大手による救済を模索するのが、最終的に預金者を守る金融行政のやり方だ。これに反し金融機関に破産処理を強いた世紀の大失政がリーマンショックと言える。そういう意味で今回の救済策は金融行政がうまくワークした前例を作ったとも見れる。フィスコデジタルアセットグループの田代社長はインタビューで仮想通貨交換所の運営にも金商法の理解が必要としたが、国内第3位の交換所の舵取りが、麻生大臣曰く「システムとガバナンス(企業統治)に問題がある」経営から金融行政熟知した経営に移ることも長い目で見ればプラスかもしれない。この材料だけを以って、上値を追っていく展開は展望しにくいが、少なくとも底堅く推移していくと考える。

本格回復は1か月後ずれ

一方で相場の本格的回復には規制面での議論の進展が望まれるという見方は不変だが、7月のG20で10月までにマネーロンダリングやテロ資金対策の世界基準(一般にはFATF勧告)をどう仮想通貨に適用するか託されたFATFのマーシャル・ビリングズリ―会長がFT紙のインタビューで今の規制はパッチワークのように国によってまちまちだが世界統一の基準を適用することに自信を示した。ただ、同氏は10月14-15日にパリで開催されるFATF総会で議論するとしており、これでは10月11日のバリG20に間に合わない。前回G20を受けて、気の早い市場参加者は9月のFATF中間会合で議論、報告書に纏められ、10月G20で採用される見方もあったが、10月の総会で議論し11月29日のブエノスアイレスG20で採用される形で1か月、後ずれすることが有力となった。米SECがCBOE分とされるBTC現物を用いたETFの正式審査開始の発表を受け、にわかに期待感が強まっているが、現段階ではコメントを募集している段階で今月30日の期限までに最終決定がなされる可能性は低いと考える。本格的な回復はFATFの報告とNYSEの親会社がBTC現物受渡先物市場Bakktを開始する11月に入ってからか。

底堅いが上値は重い展開が続く

米大手投資会社フィデリティ―も年内に何らかの発表を目指していると報道されたが、これは機関投資家のニーズが高い事の証左。また実用化が新たなステージに進む期待が高まるXRPの一段の上昇も期待され、BTC相場は底堅く推移しようが、本格的な回復にはもう少し時間がかかるか。

予想レンジ BTC 70万円~85万円

Altcoin

ETH:下に往って来いの展開。24000円近辺でオープン。BTCの下落に加えSEC委員長が過去のスタッフの発言の法的拘束量を否定。これが、6月にSEC高官により証券ではないとされたETHが再び証券とされる可能性が出たと嫌気され22000割れへ下落。しかし水曜と金曜のXRPの急騰を受け25000円台に値を戻している。一方でSECのステファニー・アバキアン氏はICOに対しもっと本格的な取締りが必要とした。2017年に実施されたICOの8割が詐欺だったというレポートもあり、中国政府もICOの危険性を再度警告している。このような中、史上最高を記録した上半期に対し、新規のICOは急速に縮小しており、ICOによる需要の先食いで支えられてきたETH相場は当面上値の重い展開が続くか。

XRP:ここまで好材料が続く中、冴えない値動きを続けてきたXRP相場だが水曜から金曜にかけて5割以上の急騰を見せ50円台に回復した。リップル社幹部性が―・サーバイ氏がCNBCでxRapidの商用利用を来月に立ち上げる方針を示すと、Zaifの障害発生の報にBTCが急落する中、XRPは底堅さを維持。水曜日には2割近い急騰を見せ、金曜日にも3割近い急騰を見せた。8月にリップル社のブラッド・ガーリングハウスCEOがQ3に記録的な機関投資家の買いが入ると言っていたことが現実となった形。その背景にはxRapidの普及と来月からの商用利用開始、今秋からスマホでの送金アプリを国内の銀行へ提供開始が予定されるなどXRPの実用化が本格化するという期待が、特に10/1-2のクリントンが出席するカンファレンスに向けて高まっていることが指摘できる。元々、XRPにはその実用性や将来性にベットするリップラーというファンが多いことで知られ、その長期保有ポジションの重さが相場の重しとなっているとも指摘されるが、ここしばらくのベア相場で手が出なかった投資家がこの急回復を見て参戦することも考えられ、一段の上値が期待される。



BCH:前週末はBCHのサポーターであるBitmain社の財務内容が悪化している(その原因の一つが保有するBCHの下落とされている)との観測記事やZaifにてBTC・BCHの入出金が停止されたことで急落、顧客資産は安全確保されたとの報に下げ止まる展開。その後、XRPの急騰やハッキングされたBCHはフィスコ社からの支援で補償されるとの報に値を戻した。但し、BCHの盗難額は未だ判明しておらず、よって補償と言っても内容は全く不透明で、今後の行方に注目される。

LTC:注目のLTCサミットでは第2のライトペイなるものは出ていない模様だが相場は堅調に推移、BTCの下落に加え、創始者チャーリー・リー氏が21百万が上限のBTCは世界の富裕層が全て1BTC購入したら不足してしまう。従って(LTC含め)アルトコインよりも1BTC買うべきとするとLTCは下げ足を強める。しかし同氏がアルトコインのTOP3としてLTCを一番に挙げると下げ止まり、XRPの急騰や同氏のLTCのショートポジションを払拭する(ような開発をするという趣旨)とすると値を戻している。

Calendar

9月25-28日 フィンサム2018(東京)金融庁・日経新聞共催
9月27日 金融庁シンポジウム
9月28日 CME BTC先物9月限最終取引日
9月30日 CBOE分のBTC ETF可否判断

FXcoin Weekly Report 2018.09.21.pdf

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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