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【第10回】 オプションディーラーの視点 ~大口ブロックトレードの背景について~

2019-10-02 10:47[ SF

オプションディーラーの視点 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン

BTCオプション市場の動向(9/25~10/1)
期近物オプションの建玉変化を確認すると(※本年12月末までに行使期日を迎える短期オプションに限定)、ほぼ全てのストライクにおいて建玉の減少が確認されます(前週比▲25,888 BTC)。背景には、巨大足が集中していた9/27オプションが先週金曜日にExpire Dateを迎えたことが挙げられます。



この中で特に注目すべきポイントは、「13,000ドル行使価格のオプションのみ建玉の減少が見られなかった」点です(赤で囲っている部分、前週比+38 BTC)。

本稿では、なぜ13,000ドル・オプションのみ建玉が減少しなかったのか?
またその背後にどのようなフローがあったのか?について考察いたします。

13,000ドル・オプションのみ建玉が減少しなかった理由?

答えはいたってシンプルです。13,000ドルで大口のトレードがあったからです。オランダの仮想通貨オプション取引所deribit社の取引履歴上には、9/30付けで下記2つの大口トレードが確認されます。

・BTC CALL USD PUT 29 Nov 13000 call in 200 btc @IV 91.6%
・BTC CALL USD PUT 29 Nov 13000 call in 400 btc @IV 90.3%

また、同社のtwitterによれば、上記2つのトランザクションは仮想通貨デリバティブ専用のOTC取引メッセージツールparadigmを経由して約定されたとしています。Paradigmはderibit社と米Paradigm社が共同開発したメッセージ機能付きトレードツールで、大口のブロック取引を行う際に用いられます。



ブロックトレードは、既存のFXオプション市場における「インターバンク・ダイレクト(金融機関vs金融機関のOTCマーケット)」に近い存在です。ブローカースクリーン(板など)を介さず、買い手と売り手が直接大口トレードを行う取引方法です。FXオプション市場では、OTC取引の際にメッセージをやり取りするツールとして、Reuters D3000やBloombergチャットが用いられますが、仮想通貨オプション市場の場合、paradigmを用いることが一般的となりつつあります(以前はTelegramが主流でした)。

13,000ドル・オプションのブロックトレードの背景は?

それではなぜ、このような大口取引(ブロック取引)が発生したのでしょうか?推測の域を出ませんが、当方では、大口トレードの背景に、マイニングファームの在庫ヘッジがあったと推察しております。仮想通貨オプション市場におけるメインプレイヤーは、①個人投資家、②ヘッジファンド、③マーケットメイカーに加えて、④マイニングファームが挙げられます。彼らのニーズは保有するビットコイン(在庫)の為替変動リスクのヘッジ。つまり、ダウンサイド・プットの買い(マイニングにおける損益分岐点をプット・オプションの行使価格に設定)に潜在的なニーズがあります。但し、プット・オプションをネイキッドで購入すると、オプション料(ヘッジコスト)が嵩みます。従って、オプション料の支払いを軽減すべく、コールオプションの売却と組み合わせてゼロコスト化することが一般的です。MM(マーケットメイカー)が相場観のみで600BTCものコールオプションを売却することはありません。これだけ大きな額でコールオプションを売ることが出来るプレイヤーはただ一人、マイニング報酬という実需(在庫)を持つマイニングファームのみと言えるでしょう。大口フローが出てきた際は、その背後にいるプレイヤーを想像することが大切です。特に、コールオプションの巨額売りが出た際は、真っ先にマイニングファームのコール売りの可能性を探るべきでしょう。




SF

赤色メガバンクの市場部門出身。英国ロンドンでチーフFXオプションディーラー → 東京本部でFXマーケットアナリスト → FinTechベンチャーで取締役チーフアナリスト → FXcoinでPM(現職)。為替一筋17年。G10通貨・新興国通貨・仮想通貨まで幅広くカバー。日本経済新聞社やテレビ東京などマスメディアへの寄稿・出演実績多数。Twitter:https://twitter.com/HelloDerivative

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